
●色弱者、高齢者向の色使いを考える
11月に行われた色彩検定は、滞りなく終了しました。今回は社長の受けたUC級の内容から、色について少し考えていきたいと思います。「年齢や能力、状況などにかかわらず、できるだけ多くの人が使いやすいように、製品や建物・環境をデザインする」ことを「ユニバーサルデザイン」と言います。アメリカのロナルド・メイス博士という方が提唱しました。彼は自身が車椅子生活だったことから、「後付けでなく、最初から」使いやすいものをデザインする、という「バリアフリー」に変わる新しい考え方を世の中に広めたのです。
今回勉強したUC級のUCとはユニバーサルカラーのことで、高齢者や視覚異常のある人にとってもわかりやすい色の配色を学ぶという内容でした。
かつて「色盲」呼ばれた色覚異常(※)
目の奥の網膜に光の波長を感知する3種類の細胞があります。それぞれ波長の長、中、短を識別することができるのですが、そのうちのひとつが機能しない状態を色覚異常と呼びます。色は様々な光の波長の組み合わせで表現されるので、バランスが崩れてしまうということですね。いい例えかわかりませんが、プリンターの一色だけがなくなった状態で印刷した時のようなイメージです。これは遺伝によるもので、男女ともその因子はもっているのですが、実際に色覚異常が発現するのは男性に大きく偏っています。
※「盲」という言葉に差別的な意味合いが含まれることもありますが、実際に色覚異常の方は色が全く見えない(モノクロに見えている)わけではなく、特定の色域の判別が難しいだけでほとんどの色の差異は認知できるので、言葉そのものが当てはまっていないことから最近は使わないケースが多いようです。

色覚異常の人が判別しづらい色
色覚異常と言っても色々型があるので一概には言えませんが、右(図1)のような色の組み合わせの判別が難しいようです。違った色なのに同化してしまうので、この組み合わせで重要な情報を表現することはよろしくありません。色覚異常は男性に発現する確率が高いため、わたし(太田垣)の子供の時はそれを疑われました。叔父が色覚異常だったためですが、叔父の仕事はグラフィックデザイナーでした(笑)。
恐るべし加齢、目の衰え

色覚異常は全体の50%ですが、加齢は100%です。よく聞く白内障という病気も、70歳では90%もの人が罹患するというデータがあります。手足と同様、水晶体や網膜が弱ってくるため、自然なことではありますが、当然色についての見え方も変わってきます。特に注意すべきは黄色と白で、みなさんはどこまで視認できるでしょうか?
背景が濃いと見えない、明るすぎても眩しい
よく高齢者対策として「文字を大きくする」というものがあります。新聞の文字も2008年に変更が加えられ、今の大きさになっています。特に明朝体は横棒が細いため、小さな文字には不向きですので、私たちも使用する際には多少気を使います。しかし、歳を重ねるとそれだけではありません。明るさの違いを読み取る能力が低下するのです。背景が暗かったり、写真があると、その上に配置した文字が読みづらくなるのです。下図(図2)をご覧になった時、左の方が読みやすい、と思った方はすでに高齢者です!…というのは言い過ぎだとしても(若年者の選択が逆になることはない)、この読みづらさのストレスが、デザインにおいて読んでもらえるかどうかの大きな分岐点となります。また、これは紙面のデザインでは当てはまりませんが、加齢によって明順応・暗順応のスピードが極端に遅くなります。動画などで目立たせたいものを光らせても「眩しいだけ」になり、効果的に内容が伝わらない、ということですね。