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Image by Dong Cheng

千と希の設計図 web版 2022年9月号






山本:この度、絵画教室でタブレットを使ったクラスをスタートさせましたね。



太田垣:いつかやるかも…、と思っていたのですが、「今」やらないと実現しないという

気がしました(笑)。もう10年以上になりますか、あるインターナショナルスクールに行ったとき、そこは中高一貫校だったと思うんですが、生徒が皆iPad持ってて、MVとかを自分たちで作ってたんですよ。しかも結構いいクオリティで。「えぇ〜今の子たちってこんなのやってるのか」と思ったけど、よくよく考えると「今の子たち」じゃなくて「その学校の子たち」だったんですよね。日本の一般的な学校ではそんなことやってなかった。その時はまだ絵画教室はなかったけど、焦りというか悔しさというか、そんなものが源流にありましたね。



山本:絵画教室としてはめずらしい方かと思いますが。



太田垣:現実的に考えると、10万円近くするデバイスを絵を描くためだけに使うってのは、そこそこ授業料を取れる学校でないと難しいだろうな、というのはわかります。専門学校などでは昔から取り入れているところはありましたよね。



山本:どんなレッスン内容になりますか。



太田垣:レベルを3段階にわけ、それぞれに細かく項目を設定しています。でも基本的にはマンツーマンなので、受講される生徒さんに合わせた内容になると思います。表現したいものもそれぞれで、風景画を描きたい人もいれば、人物を描きたい人もいるでしょうし…「デジ絵だからこういうモチーフが向いている」というものはありません。ただ、実際には漫画やアニメ、ゲームのキャラクターなんかを描いてみたい人が多いんじゃないかな。僕もそうでしたし。デジタルならではの作業工程や、表現の幅の広さなどを使えるようになってもらえたらと思います。



山本:作業環境としてはどういったものになるでしょう。



太田垣:アップル社のiPad AirとApple Pencilを一人ずつ触ってもらう予定です。ソフトはアイビスペイ

ントを採用しました。イラストを描くとなると、クリップスタジオやフォトショップなどが定番ですが、アイビスペイントは無料なので、ご自宅でも同じソフトで作業しやすいのでは、と思いました。また、無料とはいえかなり機能は充実していて、かつ使いやすい。ブラシのいくつかは有料ですが、買い切りというのも採用したポイントでした。



山本:実際にタブレットを使ってみてどういう感想でしたか。



太田垣:実は以前から液晶ペンタブレットはスタッフ全員のPCに随時使えるようにしてありまして、仕事では使っていましたが、今回はApple Pencilに期待していました。僕も使いましたよ。筆圧の感知がより自然な感じで、ペンが紙を擦るギリギリを移動する際、細い線を描けたりするのがリアルなんです。アナログの感覚がそのまま生かせる嬉しさがありましたね。やり直しが簡単にできること、後から色や効果を変更できること、拡大縮小ができることなど、アナログでできなかったことがたくさんできるようになりました。消しゴムで何度消しても、紙を傷めたりしないというのも地味に嬉しいです。細かい部分は多少妥協しながら仕上げていた時代と違い、完璧を目指して絵を仕上げられそうな気にさせてくれますね。








デジタルネイティブなスタッフはペンを使わず「素手」で描いていきます。好みではありますが、授業ではペン推奨です(笑)










山本:スタッフの方々(講師)はどんな意気込みでしょうか。



太田垣:たぶんそれぞれにデジタルデバイスを使うことには使命感のようなものを感じていたのではないかな、と思います。僕が想像してたよりもずっと熱心に取り組んでいます。もっとも、今回初めて触る、というスタッフはほぼいないので、改めて「人に教えるシチュエーション」を想定して知識を整理したりしている感じです。中にはデジタルイラストがとても得意なスタッフもいるので、この分野では周りをリードしてくれています。



山本:どういった方に受講してもらいたいですか。



太田垣:絵が好きな人は全員(笑)。…といいたいところですが、強いて言うならやはり若い人たちですね。僕の世代だと、「絵を描く道具が変わった」という認識ですが、このデバイスでしかできない表現もたくさんあるし、若い人は「これさえあれば自分の世界が広がっていく」と感じる人もいるんじゃないかな。まるで自分の自転車を手に入れた時みたいに、「これさえあれば世界中どこでも行けるぜ」と思うあの感覚。そのワクワク感を好きなだけ伸ばしていければ、どんどん上手になると思いますよ。