
TMネットワーク40周年
コロナが明け、弊社のお客さまである音楽イベント開催の事業者さまも活気を取り戻しています。がっきー社長の大好きなTM Networkも精力的に活動を開始しているので、嬉しい限り。何度かコンサートにも足を運びましたが、ステージはいつもキラキラしていて、彼ら3人はいつまでもカッコ良く、憧れの存在です。残念なことにTM Networkのお仕事はいただけないのですが、いつかできることを夢見つつ、今回は音楽チラシについての非常にコアでマニアックな部分を考えたいと思っています。
ゴールドのアイコン
それぞれのアーティストはその活動の節目にアニバーサリーコンサートがあります。また、アーティスト自身のアニバーサリーとは別に、「○○ホール20周年記念」「終戦記念」等、そのイベントの記念行事という場合も多いですね。そこで登場するのが「●●周年記念」というあしらいです。
表現の方法は多々ありますが、多いのがゴールドを使用したものです。つまり、金の盾やメダルに刻印されている、というていで表現されるものですね。代表的なものを一つ作ってみます。

よくみる形ですね。これはゴールドに見えますが、実際に金色は使っていません。弊社でよく使うのはC23 M36 Y73といういわゆる「黄土色」とその類似色のグラデーションです。
大事なのはその上に載せる「40thANNIVERSARY」の文字が見づらくならないことです。これはどのアイコンにも言えることですが、目立たせたいから本文から独立してのアイコンなので、読みづらいなどというのは論外です。目の端っこに写っていても読めてしまう、というのが理想ですね。もちろん「ゴールドだった」という印象も同時に残さなくてはいけません。リアルさよりもイメージを重視したゴールドの色合いを作り出します。

ダメなゴールドアイコン
はい、ゴールドのアイコンには良いアイコンとダメなアイコンがあります。
C〜C’:リアルなゴールドっぽさをより出そうとすると、写り込みを再現したくなります。ゴールドに限らず、シルバーやブロンズなども同様ですが、表面が「つるんとした」滑らかなものは、必ず何かが映り込みます。ゴールドの場合は黒っぽい色で表現することが多いですね。ところが、質感はアップしても、文字が見えづらくなってしまいます。とはいえ、C’のように明らかに文字を避けるようなあざとさは逆にクオリティを下げるのでNGです。言うまでもありませんが、ここで文字に白フチをつけるというのは愚の骨頂です。ゴールドに刻印されている世界が完全に壊れてしまうからです。
D:これをやる人はあまりいませんが、時々ギラギラした感じを出したくて、この面積の中で何度も明るい↓暗いのグラデーションを繰り返す処理を見かけますが、いわゆる「ダサい」デザインになっていきます。

玄人のAとB
AとBは、まずどこが違うかわからない、という人がほとんどではないかと思いますが、強いて言えばBの方がキラキラしてて好き、と思いませんか? 違いはそう、縁の(厚みの部分)のグラデーションです。Bの方が明るい部分がより明るく、キラキラしています。しかし、我々はAを作ります。縁の部分というのはいわゆる「囲み」なので、ここが紙色と同化すると、「囲みが切れている」という印象を持たれるケースが多いからです(この場合は「縁が欠けている」ということになりますが)。これは結構指摘を受ける箇所で、最初からここのグラデーションは控えめに設定するようにしています。
玄人のカーニング
そして、たぶん誰にも気づかれない部分として、「ANNIVERSARY」の文字詰めが違います。B以下のものはデフォルトでタイピングしたものですが、じっくりみると、AとN、SとA、Rの空間が他よりも空いています。文字列というのは遠くから見ると「線」になっていなくてはいけないもので、文字と文字の空間が不均等だと、「線」が途切れてしまってよくない、と先輩から教わりました。今では確かにその通りだと思います。ここでいう文字と文字のスキマのことをカーニングと言いますが、距離ではなく、文字の形が生み出す空間を意識することが大事です。とはいえ、このアイコンレベルの大きさではほとんど気にならないわけではありますが…稀に同じ絵柄でポスターサイズにする、という決断が下される場合もありますので、あまり気は抜けません。また、同業他社に見られても恥ずかしくないものを作りたい、という意地もあります。と、こういった細かな仕上げをきちんとすることで、デザインが長持ちするはずです。みなさんもデザインされたものを見る際、細かな部分に着目してみると、プロアマの差を発見できるかもしれません。
